2022年7月9日午前5時鈴太郎が旅立ちました。
2020年7月9日鈴太郎は、偶然?必然?様々なことが重なり合ってぴ~すにやってきました。
私は、いつも三重県動物管理事務所の迷子犬情報をチェックしています。2020年4月頃見るからに高齢で歯石の酷いカニンヘンダックスフンドが上がりました。保健所に電話をすると飼い主さんが見つかったとのこと、良かった!と思っていたら暫くしてまた同じようなカニンヘンダックスフンドが同じ保健所の迷子犬に登場しました。「私は別にダックスが好きなわけではないのですが」と電話を入れると実は前の犬と同じ犬で、今回は飼い主さんに電話をしても繋がらないとのこと、期日を待って引き取りますと話しました。ここで不思議なのは、飼い主が判っている以上迷子犬ではないと保健所の職員さんが判断して管理事務所の掲示板に上げなければ、私は知る由もなく、また引き取った時の状態からして、よく生きていたと思える犬でした。
3㎏位が適正と思われる体重は1.4kg、歯石と歯周病でグダグダの口の中、栄養失調によるのか生まれつきの形成不全なのか股関節がヘンでペコタンペコタンと歩く、とにかく食べさせて歯の治療をと必死で食べさすも、食が細くなかなか体重が増えない。2kgになり歯石を取りようやく落ち着き、1年ぐらい鵜方施設で暮らしました。ところが段々と歩行困難になり、自宅で静養を始めました。
ここから彼と私の特別な時間が始まります。それでもはじめは傾きながら必死で歩いていましたが、やがて歩けなくなり寝たきり状態に、彼も「もう僕は死ぬのを待ってるだけやな」と毎日を鬱々と過ごすようになりました。何とかできないかなとネットで調べて車椅子を買おうと思い、「ぽちの車いす」さんにコンタクトしオーダーメイド車いすが届きました。初めて車いすを手に入れた彼、真っ先に水を飲みに行きました。彼の喜びようは予想を遙かに超え、朝5時から「車いすに乗せろ!」と、半年ぐらいではありましたが、自分で動かせなくなってもお気に入りの車いすで食事をしました。
毎日歯磨きをして、お尻洗って、褥瘡処置をして、鈴太郎とはいろんな話をし、優しい、大切な時間を過ごしました。旅立つ前の夜、それまでグラグラして抜けそうでも絶対に抜けなかった犬歯が抜けました。「これですっきりするね鈴ちゃん!おやすみ」というと鈴太郎は、無言でじっと私を見つめていました。おしゃべりな鈴太郎が、黙って私をじっと見つめていました。
鈴太郎とのエピソードは語り尽くせないほどあります。そのうちのいくつかをご紹介します。
1:車いす
いつも車いすで曲がり切れずスタックすると「動かないぞ!」と何度も呼ばれました。ある日、とても若くかわいい二人の女性がボランティアとして来てくれて「鈴ちゃん格好いい!」「鈴ちゃんすごいね!」って言って拍手と応援をしてくれると、彼はいつも以上の高速で、スタックすることもなく、グルグルとランを何周も走りました。車いすは、鈴太郎に自己表現する方法と生きる希望を与えてくれました。
2:暑いわ!
流動食に替えた彼は、食欲旺盛でガンガン食べて、毛づやも良くなって行きました。寒いかなと思ってホッカイロを二つ布団の間に入れて暫くして見に行くと「暑いわ!暑すぎるわ!」と私を睨みつけて足をバタバタさせて怒っているではないですか!それから毎日、寝る前に「寒くない?」と聞くようになりました。すると彼は、「うん」と毎回返事をしてくれました。頭を動かす気力のないときは、まばたきで返事をしてくれました。ある日「寒くない?」と聞くと返事がない、「鈴がうんて言わんていうことは寒いの?」というと「うん」と
3:今からや!
寝たきりになった鈴をよく観察すると、おねしょはしない、何時でも「オシッコ出るわ」「ウンチ出るわ」と教えてくれましたが、私が起きなかったり、居なかったりするとそのまましてしまっている。そこで起きたらすぐにトイレに連れて行きウンチしよう!と促してみました。すると「ああここでウンチするとお尻についたりして気持ち悪くならんな」と思ったのか毎朝トイレでウンチするようになりました。ある朝なかなか出ないので、「今日はウンチ出やんのやな、そんな日もあるわな」と帰ろうとすると「今からや!今からするんや!」と睨まれ、なるほど今からでした。
4:手のひらを太陽に!
鈴は一日2食、午後は鵜方施設に来て食事をしました。食べるときは回りのみんなで歌を唄いました。するとリズム良く食べさせないと、「遅いわ!」と、そしてリズムに乗せるとバクバクと完食!歌は「手のひらを太陽に」が好きだったように思いますが、「アルプスの少女ハイジ」「鉄腕アトム」「とんでったバナナ」「幸せなら手を叩こう」とにかくみんなでいろんな歌を唄いました。それは、歌を聴いて楽しそうに食べる鈴太郎がいてくれたからです。オマケの効果として歌が気に入ると一緒に聞いている松助が踊っていました。
5:りんりん星の王子さま
「鈴ちゃんはどこから来たの?」
「りんりん星」
「りんりん星ってどこにあるの?」
「太陽の近く」
「遠いところやね」
「りんりん星から何で来たの?」
「りんりん号」
「りんりん号って今どこに置いてあるの?」
「鈴鹿」
「鈴鹿に置いてあるの!?ほんならりんりん星に帰るとき鈴鹿まで行かなあかんの?」
「大丈夫、呼んだらすぐ来る」
「そうか~でも鈴ちゃん、もうりんりん星に帰らんとずっと地球でお母ちゃんと暮らしたら?」
「あかん」
「なんで?」
「僕はりんりん星の皇太子やから帰らんならん」
「えっ!鈴ちゃんはりんりん星の王子さまなんや!?」
「うん」
「そうなんや!」
「ほんならおかあちゃんも鈴ちゃんが帰るときりんりん星に一緒に行こうかな」
「あかん!」
「なんで!?」
「りんりん星には空気がない!」
「あ~ほんならあかんなあ」
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「鈴ちゃんのお父さんはりんりん星の王様なんやろ?」
「うん、りんりん星の国王」
「そやのに鈴ちゃんは、なんで地球に来たん?」
「冒険やな!」
「ふーん」
「鈴ちゃんは、兄弟おらんの?」
「弟とお姉ちゃんがおる」
「弟は一緒に地球に来んかったん?」
「弟は僕みたいにバイタリティのあるタイプやないの!」
「堅実なヤツやからな、りんりん星に居る」
「鈴ちゃんのお母さんはきれいな人?」
「うん、お姉ちゃまもお母さまに似てきれいや」
「鈴ちゃんも男前やもんな!鈴ちゃんは、りんりん星に帰ったら国王になるわけやな」
「うん」
りんりん星に戻った鈴太郎は、今ごろ戴冠式を終え、賢く、思いやりのある素敵な国王として、りんりん星を治めているのだろうと思います。そういえば鈴ちゃんに何代目の国王になるのか聞くのを忘れました。「2代目」というような気もしますし「18億7979代目」というような気もします。